早稲田大学ラグビー部入部式で講演
(新入生はのちの大田尾主将の学年)
[2000年4月8日 東伏見運動場内 校舎]

常にいまの自分より上を目指して

今日は、みんなにこういうことをぜひやってほしいなということをいくつか言えればなと思います。
 その頃のことをいろいろ考えたのですが、僕自身、大学生としてはちょっと生意気で、“人ができないようなことをなんかやってやろう”と思っていたんです。せっかく1年間、まあほとんど遊んでたんだけど、予備校まで行って両親にも金を出してもらって早稲田に入ったということもあったから、ここまで来た以上はやっぱり人ができないことを何かやってやろうと。そういうことを当時すごく意識していたわけです。
 で、みんなにまず、この1年間かな、あるいは今日1日でもいいけどぜひ守ってほしいことは、“いつもそのときの自分よりも上のものを目指す”ということ。何が上かってすごく難しいけれど、“自分より上の技術、自分より上のスピード、自分より上の読み、そういうものを身につけるにはどうしたらいいのか、どうやったら自分のものになるのかということを常に意識する”。これをぜひお願いしたいと思います。

残念ながら最近ちょっと負けていることもあって、何を目指せばどこまでいくのかっていうのが、非常にわかりにくくなっていて、学生のみんなには気の毒だと思う。
 選手のみんなからすると、さっきみたいに宿沢さんを倒すことを目指すとか、この先輩をやっつけると俺はもう関東学生間違いなしだとか、全日本の学生ぐらいすぐなれるとか、JAPANのFBのポジションがあいてるなとか、そういう目標がわかりにくいかもしれない。
 けれども、ここのラグビー部にはそういう潜在力がいつもある。高校時代は有名じゃない選手でもここで自分を磨けばそういうものはすぐ近くにやってくる。それをまず、絶対忘れないでほしい。自分自身、そういうことを当時かなり意識していたと思います。

つまりここでやっていると、JAPANどころか、オックスフォードでもいいけれど、イングランドでもいいけれど、つまり、世界につながっていくんだということをぜひ忘れないでやってほしい。みんなの先輩のなかにはそこまで頑張っていた人がたくさんいた。
 よく我々の頃、大西先生は「日本のラグビーを創造する」と言っていた。「日本のラグビーを創造するってことはより高いもの、いま世界にないものを作ることなんだ」と。そういう気概が大事なんだろうと思います。
 僕はそういうことを、東伏見で一番最初に叩きこまれた。ポジションはFBだったんですけど、例えば当時全日本だった植山さんが1対1で教えてくれる。練習が終わったあとも呼び出される。当時、僕はその価値がよくわからなくて、「なんで俺はこんな練習させられてるんだ」って思ってましたけど、しかしそれは彼らのメッセージであったわけですね。「より上を目指せ」と。「留まるんじゃない」と。「もっと通用するんだ」と。
 僕自身、体格に恵まれていたこともあって、当時はウェールズが強かったんですが、JPR・ウィリアムスとか、あるいはフランスのセルジュ・ブランコとか、もう世界的に有名なFBがいて、ぜひこいつらを目指すべきだということを強く言われた。そういうことは僕だけが言われたんじゃないと思う。FWの連中はFWの連中なり、他のBKの連中はBKなりにみんな意識していたと思う。ですから、そういうことが夢物語じゃないんだと、できるんだという自覚を持ってぜひ目指してほしいと思います。

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