早稲田大学ラグビー部入部式で講演
(新入生はのちの大田尾主将の学年)
[2000年4月8日 東伏見運動場内 校舎]

ここには世界を目指せる環境がある、それを活かすも殺すも自分次第である

その後、僕はオックスフォードに行った。そのときも僕自身は全然恐くなかった。それはもう、23年前の今日、入部式のときに感じた緊張感の方がずっと高かった。
 オックスフォードに行って、学校が始まる前にセレクションに出ましたけど、「これはもうすぐにできるな」と思いました。それは技術的にも、それからスピリッツ、こいつらをやっつけようという気持ちでまったく負ける気がしなかったからです。

当時は言葉もできなかったですし、誰かそこへ連れていってくれる人がいるわけでもない。世話になる人が誰もいないわけだ。全部、自分でやる。たいへんだったんですけど、ここまで来たんだからなんとかなると思ってセレクションに出たら、全然大したことない。
 ある意味では第一線でやる感覚を忘れていたんだけれども、この東伏見で教えてもらった技術は直ちに通用した。そういう直ちに通用する技術、直ちに通用する強さ、直ちに通用するラグビー、そういう高いものをぜひ目指してほしい。みんなはそういうことをできる能力があるし、そういうことができる環境にあるんだ。

ただし、そういう環境を活かすも殺すもそれはもうみんな次第です。環境は常にあります。
 もっとも、そういう環境がない大学、環境がないクラブチーム、ラグビー部、こういうのは世の中にゴマンとある。おそらくこの中にも高校時代あまり名もない高校でやっていて、そういう経験がなかった人もいると思う。しかし、そういう人でもこの東伏見に来て、ラグビー部のメンバーになれば、そういう環境がみな無条件に与えられる。そのことをよく意識してほしい。
 でも、この環境を活用して“自分により高いものを課す”、あるいは“世界を目指す”といったことをやるかやらないか、それはもうみんな次第である。これをやらないのであれば、ひょっとしたらこんなところで時間を使って、朝からグラウンド走るなんてことはやめた方がいいかもしれない。僕らがやろうとしているラグビーというのはそういうものであるということを絶対に忘れないでほしい。そういうことをぜひ今日、入部式の日に頭に叩き込んでほしい。
 環境は与えられている。それを活かすかどうかはみんなの力次第。もっと言うと、みんなのやる気次第である。このやる気っていうのはとても難しくて、そう簡単には長続きしない。調子のいい日は「今日はやってやろう」と思っても、ダメな日はつらい、きつい。僕もそうだったし、いま仕事をやってもそれを感じる。だけどやはりそこはなんとか乗り越える。

僕も学生の時はあまり気付かなかったけれど、うちのラグビー部はたいへんな人たちがたくさん出てるんだ。最近になってわかるようになってきたんだけど、なぜたいへんな人たちがたくさん出ているのかというと、そういうものをひとりひとり社会に出てからもいつも持っていて、社会のなかでも自分の目標を決めて、毎日新しい、より高いものを目指している。結局、そういうことが何十年も積み重なっていまの体制になっているんじゃないかなということを強く強く思う次第。
 そして、そういうことをやろうっていってできる喜びをみんな知っている。そういう喜びをぜひ学生にも分かち合ってほしいと思っています。

こういうことは今日入った日から始まる積み重ねのなかでできていくものだということを頭に叩き込んでほしい。そういうことができれば自ずとラグビーの姿勢も変わってくるし、もっと感激を大きいものにできるし、それを活かして、上を目指していける。
 何度も繰り返すけれども、みんなはその環境にある。これはすごく貴重なことだ。そしてこれを活かすかどうかは君ら次第だということです。

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