早稲田大学ラグビー部入部式で講演
(新入生はのちの大田尾主将の学年)
[2000年4月8日 東伏見運動場内 校舎]

どうすればできるのかを頭を使ってとことん考える

当時、海外の試合とか見ていると、自陣のゴールラインから敵陣のゴールラインまでボールを蹴ったりしていたんですね。それを見て、自分はなんでああいうことはできないんだろうと思った。逆に、どうすればできるんだろうと思った。体格的にもそんなに劣っているわけでもないし、どうしてそういうことができないんだろうということをいつも考えていた。そんなことくらいやってやれないことはないんじゃないかと思っていました。
 僕は当時FBをやっていて、もともとキック力がないわけではなかったけど、抜群にあるわけでもなかった。ただ左利きだったんで、その左利きの有利さを活かして両足で蹴ってやろうと思って、いろんな練習をしました。
 ゴルフの穴のあいたボールがあるでしょう、飛ばないボール……あれを素足で蹴る練習を家で毎日1時間くらいやったんだ。これを1ヶ月くらいやっていると、ボールのポイントにほぼ100%間違いなく当たるようになる。
 ラグビーのボールって、蹴るのは実はそんなに難しくないんだけど、真ん中に当てるのはなかなか難しい。で、考えたんだ。「じゃあ、もっと小さいボールで練習すればいいのかな」と。しかも飛ばないボール。あれは穴があいているボールだから、いろんな風圧を受けるんだけど、あんなボールでも真っ芯に当たった時はけっこう飛ぶんだよ。回転もかかるし。
 そんな練習をしたんだけど、でもなかなかそれは結実しなかった。ところが、1年生の菅平のときに蹴った1本のキックで、突然「ああ、これだったんだ」ということがわかった。

それは自分の目指していた技術のひとつの結果です。その当時、OBとも何度も議論をしたし、1年生だったけどちゃんと教えてくれた。だから1年生のみんなも、そういうことを怖がらずにみんなに聞けばいい。練習方法は自分で考えましたが、聞くことでそういう結果が出てくる。

最近、スクラムが弱いとか、ラックの集散が遅いとかいろんなこと言われていますけれども、重要なのはそういう結論としてどうかということじゃなくて、なぜできないのかということ。これはわかる人にしかわからないところがあると思う。それをよく突き詰めてほしい。
 そのために、自分にできないようないろんな高度なプレーをたくさん見てほしい。同じ人間がやっているんだと考えればそのやり方を習得する方法があるかもしれないし、できないのにはなにか原因があるのかもしれない。そういうことを四六時中考えてほしい。

ちょっと技術的なことを言いましたけれども、そういうイメージを持ってほしい。そしてそれを支えているのは、さらに高いものを目指して、本当に全力を尽くしているかどうかです。
 この早稲田のラグビー部というのは、ただただ盲目的にやるだけじゃなくて、常に頭を使って考えてやるっていうのがポイントなんです。自分の足りないものは何かとか、自分はこういうものを目指すためにはいったいどうすればいいんだろうとか。
 それはひょっとしたら、誰も教えてくれないかもしれない。だから、OBとかコーチ、監督の言っていることもヒントにはなっても、そのとおりやっているだけでは本当はうまくいかないかもしれない。このへんは、僕もいまだに結論がわからないんですけど。ひとりひとり、体格とか体の柔軟性とかあるいは得手不得手がある。それは自分自身が一番よくわかっていると思う。そういうこともよく考えて、自分ができるにはどうすればいいのか。例えばオールブラックスなんかのプレーヤーを見て、自分が目指すプレーを決める。俺は当時は、JPR・ウィリアムスとか、セルジュ・ブランコとかを目指していた。なんでああいうことができないんだろうってことをやっぱり一生懸命考えた。そういうことをぜひひとりひとりやってほしい。

ここにはラグビーをするために来た。そしてもちろん、勉強するためにも来たんだから、目指すものが決まったらとことん突き詰めて考えてほしい。それが研究心であり、早稲田のラグビーの伝統だと僕はいまでも思っている。
 それをやっていると、絶対勝てる。人間どうしでやっている勝負なんだから、絶対勝てないはずがない。少なくとも、勝つ切り口が見えてくる。これを考えるのはみんなの責任である。これはOBになったら誰もできない。現役にしかできない。レギュラーになろうとなるまいと、それをやらないやつはここから去っていった方がいいかもしれない。これだけの環境を活かしきれないというやつだから。

時間がきましたが、今日伝えたかったのは、常に高いものを目指すこと。常に高いものを目指すために死力を尽くすこと。死力を尽くす結果が出るように、自分の頭で考えて研究すること。自分の頭で考えて研究するってところは、おそらく早稲田に入ってこられるようなみんなにしかできない。そして、そういう環境にみんなはいる。
 1年生のみんなには特に言いたいけど、今日、一発かましてくれ。俺は23年前、それを考えていたよ。まず技術的にアピールしなきゃだめだ。
 だから今日の試合でまず一発なにかかましてくれ。なんでもいいよ。自分の得意なもので。タックルでもいいし、スクラムでもなんでもいいよ。それは最終的に目立たなくてもかまわない。それは見てる方が見る目がなかっただけなんだよ。だけど、自分は今日本当にこれ一点にしぼってやってやろうっていうのを決めて、試合に出てほしい。
 俺が言いたいのは、受けを狙うとかじゃなくて、そういうことの積み重ねによって、さっき言ったより高いものを目指していって、「世界の選手をやっつけてやろう」「こいつらと勝負してやろうって」いうところまで持っていってくれ。今日はそういうことができるスタートの日だ。1年生にはこれだけ言いたい。このへんでやめます。頑張ってください。

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