田原 総一朗【ジャーナリスト】

二〇〇三年正月、私はバグダッドに取材に行った。このとき、通訳をしたりいろんな世話をしていただいたのが、奥克彦大使と井ノ上正盛書記官だった。丸腰でバグダッドを歩き回る奥大使に、私は危険ではないかと尋ねた。奥大使は、

「これでいいんです。私が撃たれないということが、イラクは平和を回復しつつあることの証明になりますから」

といっていた。当時、まだ自衛隊は派遣されていない。彼らはまさに身体を張って、日本の国際貢献を実現させていた。残念ながらお二人とも凶弾に斃れることとなったが、彼らの勇気と平和への固い意志が、日本とイラクの子どもたちに永遠に受け継がれるよう、私も努力をしていく。